三重の北の玄関口に位置し、日本海側と太平洋側の気候が混じり合う自然豊かな土地であるいなべ市。
2022年11月には「ノアソビSDGs協議会」としてワークショップツアーを開催し、北海道の芽室町(めむろちょう)、秋田県の大館市(おおだてし)の担当者や事業者が集まり、蕎麦打ち、かまど炊き、マイ箸づくり、古民家体験などを体験。夜の親睦会や翌日のディスカッションを通し、地域を超えた課題の共有や気づきが生まれました。
今回は、2023年11月に同市で行った二日間に渡る「地方×働く×アウトドア」をテーマとした、ワークショップツアーの様子についてレポートしていきます。
鈴鹿山脈の麓「宇賀渓(ウガケイ)」
今回の舞台は、鈴鹿セブンマウンテンの一つ「竜ヶ岳」の麓に位置する宇賀渓。まずは、トレッキングや山登りといったアクティビティの入口となっている観光案内所「竜のコバ」をお借りし、ツアーの流れや目的など、簡単なブリーフィングを実施した後、「ノアソビSDGs協議会」の副理事長であり株式会社スノーピーク 地方創生担当顧問である後藤健市氏が挨拶しました。
その後、同協議会の事務局である山本真道より自然と人、人と人をつなぐ働き方について講演を行いました。
今回の肝である地域と企業を繋ぐ働き方をインプットする大事な時間でした。
「Hygge」をテーマとしたキャンプ場へ
宇賀渓2023年4月に、いなべ市がデンマークのアウトドアブランドと連携して開業したNordisk Hygge Circles UGAKEI(ノルディスク ヒュッゲ サークルズ ウガケイ)。その名にある「Hygge」は北欧で用いられる言葉で、同施設では「幸福な時間」と読み替え、施設のテーマとしています。まずはチェックインを済ませ、大きなテントで昼食です。
昼食は、災害についての学びに繋げるため、備蓄食を使って美味しく加工したお弁当と、自分でお湯を沸かして作るスープをいただきました。今回は近隣ホテルのシェフにより特別美味しいものでしたが、最近の備蓄食のクオリティには脱帽です。いざという時にアウトドアギアが役立つということも肌で感じました。
午後はフィールドワークへ。今回は3つのグループに分かれ、それぞれが地域で活躍する事業者の元を訪問し、ローカルビジネスを立ち上げた経緯、事業内容、課題や展望などを伺いました。
一件目は、株式会社ピー・エフ・エムコーポレーション。築100年の古民家を改修し、カフェ併設の小さなコンセプトストア「榑えん」を2023年9月に開店したばかり。さらに、今後近くの空き倉庫を拠点に、周辺の森で新たなチャレンジを検討中とのことで、代表の楠井靖人(くすいやすと)さんにお話を伺いました。
地域に何か貢献できないかと、常にクリエイティブな発想でアイデアを出し合っているとのことで、「起業家」の精神に触れる貴重な時間となりました。
二件目は、昨年のワークショップツアーの会場「Okudo 中村舎(オクド ナカムラヤ)」を経営する株式会社イナベキカク。代表の山崎基子(やまざきもとこ)さんは、20年間で24種類の仕事につき、あらゆるジャンルでトライし続けています。また、女性起業家支援コーチであるなど、幅広く活動されています。
特別に「かまど炊きご飯」も体験したため、山崎さんからお話の時間はあっという間。それでも、山崎さんのチャレンジング精神に参加者からは「圧倒された!」という感想も寄せられました。
三件目は、いなべ市内で農業をはじめ、飲食店、パン屋、ギャラリーなど、次々と事業を仕掛け、まちに新たな風を吹き込む株式会社松風カンパニー。取締役の松本耕太(まつもとこうた)さんから話を伺いました。
「新たな事業を若い世代に任せ、まちを次世代に繋げたい」という思いで事業を起こし、なんと現在ではスタッフ30名がほぼ全員移住者というから驚きです。
フィールドワーク終了後は、全員キャンプ場へ。
ここで、キャンプ場スタッフによる「災害時にも役立つ、パラコードのブレスレットづくり」を体験。初めてのロープワークに苦戦する人も多く、みんなで助け合った結果、文字通り「結束」が生まれました。
夕食は、松風カンパニー「八風農園」の有機無農薬野菜を中心とした地元食材をBBQスタイルで。フィールドワークで訪問した3社の方も駆けつけ、交流しながら、より深く地域の課題や、それらに向き合う事業者の想いに触れました。
食後は焚き火を囲みながら、参加者同士がより深い関係性を築く時間となりました。
二日目はアウトプットワークショップ。
初日にインプットした情報を元に、一般的な企業研修の課題共有を行なったうえで、運営側に立った、理想の研修プランづくりを行いました。
晴れて来たので、滝前でリフレッシュ。カニを見つけて子供のようにはしゃぐ参加者。
雨天ということもあり、不便さもありましたが、参加者からは「新鮮な気持ちになった。」「自然の中で五感を刺激しながら、いいアイデアが浮かんだ。」「さらに付加価値つけたオリジナリティ溢れる企画を作りたい。」など、前向きな感想をいただきました。
また、地域の事業者の方々も、「異なる視点を持った方々との交流が良い刺激だった。」「新しい提案をいただいたのでブラッシュアップしたい。」など、事業に活かせるチャンスを掴んでいただいたようです。
同行した市の担当者も「野遊びの価値を肌で感じることができた。レジャーとしてのアウトドアフィールドだけでなく、新たな価値として都市部の企業のみなさまにアプローチしていきたい。」と話されていました。
「野遊び」による短時間での深いコミュニケーションの実現とクリエイティビティの発揮。それらが感じられた中身の濃い二日間となりました。