Inabe三重県いなべ市

「訪れる人々」と「暮らす人々」が
野遊びを介して地方創生の両輪に

北に養老山地、西に鈴鹿山脈を抱き、市のほぼ中央を流れる員弁川を挟んで緑豊かな自然と平野に囲まれたいなべ市では、SDGsの理念にふさわしい持続可能な新しい形の地方創生拠点の整備に着手している。

場所は、市のほぼ最北のいなべ市農業公園梅林公園。38ヘクタールを誇る敷地内には、東海エリア最大級の100種類、4,000本以上の梅が咲き乱れるほか、国際自転車ロードレースであるツアー・オブ・ジャパンの「いなベステージ」フィニッシュ地点も設定されている。

ここに、キャンプ場やグランピング、レストラン、温浴、物販、体験エリアさらには憩いの広場等を包摂する拠点を展開することにより、いなべを訪れる人々にとっての”非日常的”な空間と、いなべに暮らす人々にとっての”日常的”な空間をそれぞれ創出するとともに、すべての人々がいなべならではのコンテンツを体感し、「野遊び」を通じて交流できるような、「いなべらしい」地方創生を実現していく。

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Reportレポート

地域の暮らし、魅力を体験するノアソビリゾートいなべ

三重県の一番北に位置するいなべ市。滋賀県と岐阜県に隣接しており、北に多度山脈、西に鈴鹿山脈をいただき、ほぼ中央を流れる員弁川を挟んで緑豊かな自然と平野に囲まれた地域です。

2020年に「SDGs未来都市」として認定されたいなべ市では、2020年度から本格的にSDGsの推進を行っています。

「日常生活・体験から気付くSDGs」をテーマに、企業と行政がパートナーシップを結び、おしゃれでカジュアルな体験型ワークショップを展開。日常生活で当たり前になること、そして、くり返しつなげていくことで、持続可能な開発目標の実現を目指します。

そんないなべ市を盛り上げているお店や人を訪ねました。

いなべ市から「風」を吹かせたい

まず最初に訪れたのは「上木食堂」。廃業した旅館を使い、地域の食材を使った食堂として2016年にオープンしました。

店名の由来は地域名の「阿下喜(あげき))」から。阿下喜地区は昔「上木」という漢字で存在していた時期もあり、旧旅館に保存されていた刻印にも「上木」という文字があったことから店名として使うことに。

調味料も含めできるだけ手作りで、日本の四季にそったその季節のものを摂ることが身体にとって自然で一番良いと考え、日々献立を考えているのだとか。

オープンと同時に行列ができるほど人気店の上木食堂を運営するのは「株式会社松風カンパニー」です。その事業は幅広く、「上木食堂」の他、食堂で提供する野菜を栽培している「八風農園」、ドイツパン屋「フライベッカーサヤ」、フランス料理屋「nord(ノール)」、商店ギャラリー「岩田商店」と5つの事業形態で成り立っています。

松風カンパニーの取締役で上木食堂を経営している松本耕太さんは愛知県出身。同じく松風カンパニーの代表取締役で「八風農園」を切り盛りしている寺園風

さんがきっかけでいなべ市に移住、「上木食堂」を立ち上げました。

「先にいなべで楽しいことをやっていた寺園がいて。いなべで農園をやってたんですね。そんな寺園から空き家があるけどどうかと持ちかけられました。その話を聞いて単純に面白そうと思って躊躇なく飛び込みました」

「有機農業をやりたいという夢を叶えるためにいなべの地に足を踏み入れました。コンパクトな社会の豊かな暮らしを自分たちが実践しながらモデルをつくりたくって。なので農園もやる。農園で栽培した野菜を食べられる場所もやる。そんなふうに、いつのまにか少しずつ事業が増えてきました。それでもまだまだですけどね」

寺園さんの名前「風」の由来は「アジアに大きな風を吹かす」という意味があるそう。

「日本で豊かな暮らしのモデルをつくりたい。自立した地域の共同体をつくっていきたい。それをアジアに、そして世界に広めたい。それが風を吹かせることになるのかな」

大きな目標を掲げる寺園さんに続き、松本さんも話します。

「単純に自分たちが楽しいことをしたかった。どうせここで暮らすならみんなで一緒に楽しみたい。それだけ。でも夢中になって楽しいことをしていることが結果として地域のためになっていると言われることは、とても嬉しい」

生き生きと語る二人の話からは、いなべから確実に風を吹かせている、そう感じされる希望がありました。

地域で育ててもらった恩を子供たちにつなぐ

次に訪れたのは「いなべで面白い人と言えばこの人でしょ」と紹介された、140年続くお茶農家「マル信緑香園」の伊藤 典明(いとうのりあき)さんです。昔ながらの伝統を守る製法を行いながらも、今までに蔵カフェの企画や新商品の開発など新しい分野にも積極的に取り組まれています。

「いなべの地域ではね、昔から地域の人が頑張ってたんだよ。自分はそれをただ見習って同じことやってるだけなんだよね」

伊藤さんは以前は県内の高校や中学校で体育教師柔道部顧問をつとめていましたが、祖父の病気もあり現在は家業を継ぎながらも、地元の子どもたちに柔道を教えています。

「教員として子どもを育ててきたけれど、それも自分が小さい頃、地域に育ててもらった恩があるから。今こうやって柔道をとおして子どもに教えているのも、自分の義務くらいに思っているんだよね。大きく育ってまたここに帰ってこいよ。それくらいの気持ちでいます」

伊藤さんは新たに日本茶カフェをオープンさせるそうです。

「まずは自分がワクワクすることをしなきゃね。その背中をみて、子どもたちもこの地域を楽しんでもらいたいと思ってます」

手を差し伸べてくれる人がいる豊かさ

最後に紹介するのは「okudo中村舎」のオーナーである山崎基子さん。

もともと地域おこし協力隊を経ていなべに移住し、空き家利活用や移住促進に携わっていた山崎さんですが、現在は自らが空き家を利活用、築220年にもなる古民家を改装し「okudo中村舎」をオープン。

奥のかまどを活かしたいなべの食体験はもちろん、 着付け・お茶・書道など、日本ならではの文化を体験できるイベントの開催を予定しています。

「いなべに派手なものはありません。でも目に見えるものだけではない豊かさがたくさんあります。例えば朝起きて聞こえる鳥の声。おばあちゃんとすれ違う時にする季節の挨拶。そういうものがたくさんある」

「ここにきたあなたはそれがきっとわかるでしょ?」と、とっても和かに微笑みながら話す山崎さんですが、実際古民家の改装や企画を考えることには苦労もあったのだとか。

「この古民家の良さを最大限に残す改装は、時間もお金もかかります。だけど、一人じゃないんですよ。手を差し伸べてくれる、心強い人たちが自分の周りにはいる。これはかけがえのない財産です」

取材当日も「okudo中村舎」を支えるメンバーと迎え入れてくれた山崎さん。
人生で初めて挑戦したクラウドファウンディングも目標を達成。
これからますます活躍する山崎さんにこれからも注目です。

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