秋田県大館市の恵み。
豊かな自然と歴史ある文化に身を委ねるリトリート体験
秋田県北東部に位置する大館市。秋田犬『忠犬ハチ公』のふるさととしても知られ、日本で初めて屋久島と共に【世界自然遺産】に登録された自然豊かな地域です。白神山地や奥羽山脈、出羽山地などの山々に囲まれており、米代川と長木川の清流沿いにひらけた盆地となっています。
約2万年前、縄文時代の文化も残る大館市は、先人たちの知恵や資産が色濃く受け継がれている地域でもあります。江戸時代には、武士の内職として「曲げわっぱ」が発展。明治期以降は、鉱業の技術を活用した資源リサイクル産業が大きく発展しました。
さらに飼い主亡き後も渋谷駅で主人を待ち続けた秋田犬『忠犬ハチ公』。そのふるさとも、ここ大館です。
ポテンシャルが高く年々注目を浴びている大館エリアで様々な地域に足を運び、人に出会ったことで、その魅力をより肌で実感しました。
今回は、地域を巡り、人と出会い、人と自然の営みに触れることで実感した大館市エリアの魅力をお届けします。
大館の雄大な自然が育む食
まずは今も昔も変わらず、人々の暮らしに色濃く根付いている大館の「食」についてご紹介します。
誰もが耳にしたことのある「きりたんぽ」。実は大館が本場と言われています。その昔、炭焼きや秋田杉の伐採のため山籠りした人たちが、山小屋で残り飯やおこげを練ってトリ鍋に入れたり、味噌を塗って食べたのがはじまりだとか。
地域グルメとして観光客に絶大な人気を誇り、きりたんぽ目当てに訪れる人もいるほど。ですが大館ではごく普通の家庭料理です。母から子へと代々受け継がれてきたいわば「おふくろの味」でもあり、客をもてなすために欠かせない料理。そして冠婚葬祭では必ずといっていいほど出されるごちそうです。
また、きりたんぽと並んで愛される食文化に「比内地鶏」もあります。
江戸時代、この地域一帯は「比内(火内)」と呼ばれており、地域の在来種として飼育されていた「比内鶏」は、その美味しさからお殿様への年貢品として納められるほどでした。
明治に入って「比内鶏」は国の天然記念物に指定されましたが、その原種の味をそのままに、さらに肉用鶏として品種改良を重ねて生まれたのが「比内地鶏」です。
平飼い又は放し飼い等で長期間じっくりと飼育された比内地鶏は、脂と他では味わうことのできない歯ごたえが抜群。虜になるファンも多く、最近では海外でも高い評価を得ています。
大館市内で比内地鶏をいただくのであれば、比内地鶏で日本一を目指す比内地鶏専門店『秋田比内や』は外せません。特に親子丼は絶品。グッとスプーンに山盛りのせて、めいいっぱい頬張るとぷりっぷりの比内地鶏の歯ごたえがたまりません!旨味がたっぷり染み込んだふわふわの卵とのハーモニーもぜひ味わってください。
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秋田比内や 大館本店
〒017-0841 秋田県大館市大町21
0186-49-7766
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続いてご紹介するのは、国道から離れた秘境ともいえる人里離れた場所にぽつんと佇む『北の國庵』。店主の國元さんは東京でアパレルメーカーの役員として勤めた後、横浜でうどん店を開業。そのこだわりと確かな味で評判も高かったが、ご縁があり大館へ。
現在は自給自足の暮らしをしており、山や川、海に入り自ら食材を調達するため休日のほとんどは自然の中で過ごすんだとか。
「自然体でいられるここの暮らしは、とても自分に合っている」と、話す國元さん。
メニューはいたってシンプル。春は山菜、秋はきのこ、夏は鮎、桜鱒など、旬の天然素材を中心としたメニューが展開されています。出汁はサバ・ウルメイワシ・イリコ・コンブ・カツオの天然の節のみ使用。化学調味料や添加物は一切使用していません。
さらに仕入れは、店主である國元さんが直接自分の目で見て、触って、納得した食材で調理するという徹底ぶり。美味しくないわけがありません。飾らない、自然な味わいを楽しむことができます。
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北の國庵
大館市早口字堤ノ岱36-1
0186-59-2233
※営業時間・定休日が記載と異なる場合がございますので、ご予約・ご来店時は事前にご確認をお願いします。
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次にご紹介するのは『しらかみフーズ』の絶品生ハム。
大自然に満ちた世界遺産白神山地の麓という絶好の環境のもと、しらかみフーズの「白神生ハム」は誕生しました。現在、旧山田小学校を製造工房として活用しながら生ハムづくりをしています。
「学校って窓がいっぱいあるでしょ。白神山地から吹き込む風を存分に受けることができてね。この自然の風が美味しくさせる何よりの要素なんだ」
にやりと笑うのは、代表の夏井さん。
「世界三大生ハム『プロシュート・ディ・パルマ』『ハモン・セラーノ』『金華ハム』に肩を並べ『しらかみフーズ』も世界四大生ハムと言われるくらいになりたいね!」
そう、楽しそうに話してくれます。
生ハムづくりに最適な環境で徹底した衛生管理のもと熟成された生ハム。
保存料、発色剤等の添加物は使用せず、秋田県産の豚もも肉と天日塩のみで丁寧に手造りされています。
しらかみフーズでは「原木オーナーの会」を冬期限定で開催、生ハムづくりの土台となる「血抜き」と「塩漬け」を体験できるオーナーも募集しています。
最後に夏井さんに一番オススメの生ハムの食べ方を聞いてみたところ、「白身の魚を昆布締めならぬ生ハム締めし、オリーブオイルとレッドペッパーを少々。旨味と塩味のバランスが抜群だよ」とのこと。
これは一度トライする価値がありそうですね。ぜひご賞味ください。
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(株)しらかみフーズ
https://shirakami018.com/
〒018-3502 秋田県大館市山田寺下24
0186-54-0022
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これからも大館の食文化を守りたい
タケノコの宝庫として知られている大館市の田代地区。そんなエリアで野菜や果物・山菜などの産直品や加工品を販売している直売所『たけのこ館』を運営している田村さん。
もともと実家は大館でたけのこや山菜の缶詰加工品業を営んでいたといいますが、家を継ぐつもりはなく県外に就職。
しかし20代半ばに転機が訪れます。
「じぃちゃんがやってた加工品業を、機械も老朽化して体力ももたないから辞めるって話を聞いて。もったいねぇなと思ったんだよね」
家業を継ぐために戻ってきたら、ほどなくして『たけのこ館』も潰すという話を聞いたという。
「この『たけのこ館』はもともと地元のじいちゃんばあちゃんの組合組織で運営していたんだよね。ただ、じぃちゃんの工場と一緒で、体力がもたないとか後継がいないという話で閉じることになって。でもこれももったいないでしょ?地元の人を守るために個人でこの場所を運営していくことに決めた」
「地元のじいちゃんばあちゃんがつくる野菜とか漬物はね、やっぱうまいんだよ。つくれる人がどんどん少なくなってきているけど、俺はその味を、その食文化を守り続けたい」
現在田村さんは、「枝豆」や「よもぎのスムージー」などファストフードの商品開発にも力を入れています。
「こういうのあると若者もきてくれるっしょ。世代問わずみんなで盛り上げて色な人が集う場所にしたい」
たけのこ祭り、きのこ祭りなどのイベントも地域の若者たちと盛り上げるべく、今後も精力的に活動される田村さんに今後も注目です。
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田代直売所 たけのこ館
〒018-3501
秋田県大館市岩瀬字羽貫谷地山下93‐2
0186-54-6168
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ご先祖様へのお祈りを込めた寿会の彼岸花
先人の知恵や資産を大切にする文化は、大館市の田代地域の高齢者グループ「寿会」にも色濃く残っています。
「自分たちの先輩がはじめたこの彼岸花づくり。当時いろんな理由があってはじめたと聞いているけど、その中の一つに冬場に生花が育たないという地域性もあったから、ちょうどよかった」
そう話すのは、彼岸花制作を行なっている「寿会」会長の虻川さん。当時はハウス栽培もこれほどまでに主流になっていない中で、鮮やかな色を放つこの彼岸花は重宝されたそう。
「彼岸花はヤナギの木をはじめとした広葉樹を使用しています。木目が白色でとても美しい。例えば杉の木だと、木目だらけでこのようにはいかない」
正確に数えたことがないそうだが、1週間に約5,000〜6,000本を制作するんだとか。
この彼岸花づくりは決して稼ぎのためだけではないと虻川さんは話します。
「ご先祖様に喜んでもらうために、まごごろを込めて作っている。そして、生涯教育の一環として活動ができればよいかと思っている。この彼岸花をみんなで集まってわいわい話しながらつくる。だんだん手先も動かなくなってきたり、足腰も弱ってくる。だけどみんなでわいわい話すこの時間はかけがえのないものだ」
自然と共存する新たな自然アクティビティを五色湖で。
先人たちの知恵や資産が色濃く受け継がれている地域、大館。
次なる歴史を刻んでいく中でキープレイスとなるのは大館能代空港から車で50分ほどの距離にある五色湖。「五色の滝」や「糸滝」を流れてきた川の水を湛える山瀬ダムの通称です。
春の新緑、夏の緑風、秋の紅葉、冬の白雪、四季それぞれの千変万化する田代の山々の彩りを映す自然の湖水五色湖では岩瀬川渓流散策、田代岳登山などエリア一帯を自然と共存するサステナブルな新しいアクティビティを今後展開していく予定です。
雄大な自然が育む食文化を堪能しつつ、日常の喧騒から離れ、ここ大館でしか体験することのできないゆったりとした時間をぜひ過ごしてみてはいかがでしょうか。